潰瘍性大腸炎の手術

潰瘍性大腸炎で手術が必要な場合とは?

潰瘍性大腸炎と手術

潰瘍性大腸炎は、主に内科で治療しますが、
「大腸を全て摘出する手術」を選択することもあります。

 

どのような時に大腸を摘出するかといいますと、2通りに分かれます。

 

@「絶対的手術適応」といって、即刻手術が必要だったり、早急に手術が必要な場合と、

 

A「相対的手術適応」といって、待機手術を行う場合です。

 

@絶対的手術適応の場合(すぐに、もしくは早めに手術が必要な場合)は、

●大腸穿孔(せんこう:大腸に穴)
●大量出血
●中毒性巨大結腸症(大腸が直径6センチ以上に腫れ上がり、毒素が全身に回る状態)
●重症型、劇症型で強力な内科治療(ステロイド大量静注療法、血球成分除去療法、シクロスポリン持続静注療法・タクロリムス経口投与・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射など)の効果がない時
●大腸癌
●高度異形成(high grade dysplasia:ガンでは無いものの、正常細胞では無い変化した状態、ガンの前段階)

のときです。

 

大腸に穴が開いてしまった時(穿孔)や、中毒性巨大結腸症などの重い合併症が起きた時には
緊急手術になります。

 

A相対的手術適応の場合は、

●内科的治療(ステロイド、免疫調節薬、血球成分除去療法など)で十分な効果がなく、日常生活が困難になるなど、生活の質が低下した場合
●内科的治療(ステロイド、免疫調節剤)で、重症の副作用があらわれた場合
●腸管外の合併症がある時・・
・小児の成長障害がある時や
・壊疽性膿皮症のとき(壊疽性膿皮症は、原因不明の慢性で進行性の皮膚壊死です。)

 

●癌合併の可能性が高いと考えられる場合。

などです。

 

相対的手術適応のときには、医師に勧められたり、
患者が希望したりして手術になります。

 

体調を整えて、心と体の準備をしてから手術ができますので、
より安全で、術後も生活の質が高くなる可能性があります。


潰瘍性大腸炎の手術についての疑問!Q&A

手術には、何種類あるのですか?

大きく分けて、手術には3種類あります。

 

@永久回腸人工肛門造設術
A全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術
B大腸亜全摘出術・回腸肛門管吻合

 

の3種類です。

 

@の「永久回腸人工肛門造設術」の手術について、もう少し詳しく説明してください

@永久回腸人工肛門造設術は、大腸を全部取って、おなかに人工肛門を作る方法です。
大腸を全部取っていますので、小腸の終わりの部分(回腸)に人工肛門を作ります。

 

Aの「全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術」はどういう手術ですか?

大腸の大部分を占める結腸を切り取り、直腸の粘膜も切り取ります。
そして、小腸の終わりの部分(回腸)と肛門をつなぐ手術です。

 

病変部がほぼ全て取り除かれるため、根治性の高い手術法です。
けれども、手術手技の難度が高く,施行できる病院は限られています。

 

Bの「大腸亜全摘出術,回腸肛門管吻合」とは、どんな手術ですか?

直腸粘膜を約2cm残して、肛門管という場所で、回腸嚢(かいちょうのう:小腸の最後の部分で、便を貯める役割をする場所)
とつなぐ方法です。

 

1回で手術を終えることができます。

 

肛門管に炎症がほとんどない場合や、肛門機能が良好な患者さんに対して行われる方法です。

 

この方法の良いところは、Aの回腸嚢肛門吻合と比べると、術後の排便回数や漏便の頻度が少ないということです。

 

一方、悪いところは、直腸粘膜が残るため,将来この残った粘膜に炎症の再燃や,癌が発生するという危険性があります。
けれども、大阪市立大学附属病院 消化器外科では100名を超える患者さんをこの方法で手術されたそうですが、
手術後に残った肛門管に、制御困難な激しい炎症をきたしたり、癌が発生したことはないと書かれています。
参考

 

大腸の摘出手術は1回の手術で行うのですか?

1回で行うものもありますし、2回、3回に分けるものもあります。

 

@の「永久回腸人工肛門造設術」は通常1回
Aの「全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術」は、2回か3回
Bの「大腸亜全摘出術,回腸肛門管吻合」は、1回で行われます。

 

Aの「全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術」の具体的な手術スケジュールを載せておきます。

 

1回目の手術では、
●大腸の全摘出をします
●小腸の末端を折り曲げて作った便をためる袋(回腸嚢)と肛門をつなぎます
●口側の小腸で人工肛門をつくります

 

1回目の手術の時に作る人工肛門は、一時的なものです。

 

手術直後は、回腸嚢と肛門のつなぎ目が弱く、
完全につながるまではつなぎ目を保護するために、
別の部分から便を出す必要があるからです。

 

手術と術後の経過が順調に進めば、術後2週間ほどでいったん退院することができます。

 

退院後、約1か月自宅療養してから、2回めの手術を行います。

 

2回めの手術では、
●人工肛門を閉じる手術を行います。

 

2回目の手術の後、約1か月間は療養期間となります。

 

ですから、社会復帰にかかるまでの期間はおおよそ3か月間ということになります。

 

緊急手術の場合も、3ヶ月で社会復帰できますか?

緊急手術の場合には、3回に分けて手術をするため、
5ヶ月ほどかかります。

 

出血や穿孔(大腸に穴があいてしまう)を起こして緊急手術を行う場合は、
素早く手術を終わらせる必要があるため、手術を3回に分けて行います。

 

緊急手術では命を救うことが主な目的なので、
とりあえず大腸潰瘍性大腸炎の手術適応のかなりの部分を摘出し、小腸(回腸)に人工肛門を作る(結腸全摘・回腸人工肛門造設術)のが一般的な方法です。

 

そのため、治療期間も少し長くなります。

 

1回目の手術では
●骨盤内の手術を省き、結腸(大腸の大部分)の全摘術を行います。
●直腸は摘出せずに残し、人工肛門を作ります。

 

手術後、2か月ほど療養した後に、2回目の手術を行います。

 

2回めの手術では
●直腸を摘出します
●小腸を使って回腸嚢を作り、肛門と吻合します。このとき、新たに人工肛門を作ります。

 

2回目から1か月半〜2か月後に、3回目の手術を行います。

 

3回目の手術では、人工肛門を閉鎖します。

 

手術のために入院してから社会復帰するまでにどれくらいかかりますか?

緊急手術以外の大腸の摘出手術を受ける場合、
入院から社会復帰するまでに、3ヶ月ほどかかります。

 

緊急手術で大腸の摘出手術を受ける場合には、
社会復帰までに5か月ほどの治療期間が必要となります。

 

腹腔鏡手術による大腸の全摘出でも、体に傷は残りますか?

昔の大腸全摘出手術では、腹部を縦に大きく切開する開腹手術が一般的でした。

 

けれども、腹腔鏡手術の手技や道具が進歩し、病院によっては、
現在潰瘍性大腸炎の大腸全摘出術において、
完全腹腔鏡下手術と用手補助腹腔鏡下手術(HALS)を導入しています。

 

完全腹腔鏡手術では、傷が小さく、術後回復も早いです。

 

デメリットは、開腹手術に比べて手術時間が長くなることです。

 

用手補助腹腔鏡下手の術は7cmほどの傷ができますが、手術時間の短縮が可能です。

 

しかも、術後の回復も早いことが明らかになっています。

 

けれども、全員が腹腔鏡手術できるわけではなく、高度肥満などの場合など、できないこともあります。

 

 

 

人工肛門って何ですか?

人工肛門とは、人工的に造られた肛門(便の出口)のことで、ストーマともいいます。

 

人工肛門という器具があるわけでなく,ご自身の腸の一部をお腹の壁に出して,そこから便が出るようにしたものです。

 

潰瘍性大腸炎の場合には、小腸(回腸(かいちょう))で造ります。

 

人工肛門には,一時的人工肛門と,永久人工肛門とがあります。

 

永久人工肛門を保有される方は,身体障害者手帳を申請できます。

 

住民票のある市区町村の福祉事務所に
「身体障害者診断書・意見書(ぼうこう・直腸機能障害用)」を請求し、
医療機関で診断書を作成してもらいます。

 

 

大腸を全部取ると、永久に人工肛門になりますか?

永久に人工肛門になる場合と、
一時的に人工肛門になる場合があります。

 

永久に人工肛門になるのは、「永久回腸人工肛門造設術」を行った場合です。

 

大腸を全部とった後、腸の壁に回腸(小腸の最後の部分)の人口肛門を作ります。
この方法では、永久に人工肛門になります。

 

「永久回腸人工肛門造設術」が適応されるのは、
肛門の機能が非常に悪く自然肛門が残せない場合と、
直腸に進行した癌がある場合のみとなっています。

 

人工肛門は、どこに作るのですか?

おへその横あたりです。↓参考に。

ストーマ 人工肛門

 

人工肛門から、どうやって排便しますか?

人工肛門の部分に、袋(パウチ)を貼って、便を集めます。

 

「自然排便法」では、排便のタイミングを調整することはできません。
食後6〜7時間くらいで自然に出てきます。

 

ガスが溜まると、袋がパンパンになることもあるようで、
空気を抜く穴がある場合は、そこから空気を出したりもできます。

 

「洗腸排便法(せんちょうはいべんほう)」という方法もあって、1日〜2日に一回の洗腸で、一定の間は便が出なくなります。

 

排便のタイミングを調整できるので便利ですが、洗腸のために1時間ほどかかるので、体力が必要です。

 

また、多量のお湯を腸の中に入れるため、不適切な方法で行うと、腸穿孔(ちょうせんこう)の危険もありますので、
医療機関でしっかりと指導を受ける必要があります

 

人口肛門になると、小腸の最後の部分に便を貯めることになるんですよね?

はい、そうです。

 

今は、回腸嚢(小腸の最後の部分で、便を貯めるための役割をする場所)の種類が、
J型だけではなくなっています。J型の他に、S型、H型、W型、K型という5種類が報告されています。

 

人工肛門ではない、自分の肛門を生かした手術の時、術後、もれたりしないのですか?

術後すぐは、漏れます。

 

手術直後の1日の排便回数が18回ということも珍しくありません。

 

下着の中に尿とりパットをつけたり、おむつをはくようにすると、
漏れても安心です。

 

 

特に夜間は、便失禁しやすいですが、手術後は普通のことです。

 

 

その後、手術後半年が経つ頃には、漏らすこともほとんどなくなり、
1日の排便回数は7〜8回ほどにおちつくことが多いようです。

 

大腸を切除すると、便が固くならないため、排便回数が増加します。

 

(手術直後は下痢止めを使用して排便回数をコントロールしますが、
ある程度経つと、排便回数は1日平均7〜8回に落ち着きます。)

 

手術では、肛門を締める役割を持つ肛門括約筋を残しているので、
術後は便意を我慢できるようになりますが、
水分を吸収する役割を持つ大腸を切り取っていますので、
なれないうちは、少し漏らしてしまうかもしれません。

 

広島大学第一外科で実施したアンケートでは、手術を受けた患者さんの18%(5人に1人程度)に週1回程度、夜間の漏便がみられましたが、

 

パッドを使用することで、術前と同様の日常生活を送ることができていたという回答が寄せられています。

 

 

大腸を切り取ったことで、出産できなくなったりしませんか?

大腸を切除したことで、出産できなくなることはありません。
自然分娩もできます。
また、潰瘍性大腸炎の方の妊娠出産と、普通の妊娠での
低出生胎児や発育遅延、帝王切開のリスクにも差はありません

 

大腸を全部切り取ってしまって生きていけるんですか?

大腸を切り取ると、水分の吸収をしてくれるところがなくなるわけですが、
小腸にも水分を吸収する働きがあるので、大丈夫です。

 

社会復帰も、日常生活もできるようになります。

 

大腸を切り取ったことで気をつけなくてはいけないことは、
「脱水」です。

 

小腸にも、水分を吸収する働きがあるのですが、もちろん大腸よりも水分を吸収する量は少ないですし、
水分や電解質が体から流れやすくなっています。

 

脱水予防のために、経口補水液:OS-1(オーエスワン)をとってください。

 

経口補水液とは、スポーツドリンクと似ていますが、
スポーツドリンクに比べて吸収率は数倍高く、
ナトリウム量が多くて糖分が少ないので、水分補給に適しています。

 

手元に経口補水液なんてないですよ、作り方教えてください

糖分の問題もありますし、
ご自分で作られた方が原料が見れて安心ですよね。

 

作り方を2通り説明します。

 

@水と塩と砂糖で作る場合
【材料】・水1リットル
     ・塩3g(小さじ1/2)
     ・砂糖40g(大さじ4と1/2)を混ぜて溶かせば、
     ほぼ1リットル分の経口補水液の出来上がりです^^

 

500ミリ分を作る時には、半分の量にします。
果汁を加えると、もっと美味しくなります。

 

A水と塩とジュースで作る場合
【材料】・100%リンゴジュース:720ml+塩3グラム+水280ml
    ・100%みかんジュース:400ml+塩3グラム+水600ml
    ・100%グレープフルーツジュース:450ml+塩3グラム+水550ml

 

全部1リットル分出来ます。

 

注:グレープフルーツジュースは、薬との飲み合わせが悪い場合があるので、
お気をつけください!

 

経口補水液は、一日に500ml〜1000mlをちびちびと飲みます。
味は薄いですが、糖分が少なめなので、安心ですし、
脱水症状になりかけている時には、すっと体に入っていきます。

 

●白血球除去療法(LCAP療法)について

 

●顆粒球吸着療法について

 

●ATM療法について

 

●AFM療法について